粉砂糖の日

どこにでもいるような女

パイナップルケーキ

ため息をすると、思ったより体から息が出ていたようで、コーヒー屋の伝票が翻った。茶をしながらため息とは、なんて贅沢で生意気な。

この日は休みだったのに何もできてなかった。描くことも、作ることも、ただ、なんとなく家を出てフラフラしていた。なにか小さなことでいいから達成したい。

そうだ!以前買ったケーキのレシピ本から何か一つ作ろう!あんまり突然の思いつきだったため、手元にその本が無く、材料が分からなかったので、近くにあった本屋に行き(偶然その本があったので)コソッとスマホにメモして材料を調達した。パイナップルケーキを作ってみることにした。いつ買おうか迷っていた電動泡立て器も勢いで買った、そんなに高くなかった。

家に帰り取り掛かる。材料を順番通りに混ぜ、バットに流し込み、焼く。作り方こそ簡単なケーキだったけれど、お菓子作りが2年ぶりとかなので少し手間取った。作業スペースが秩序なく散らかった。小さなボウルしかなかったので、粉糖と薄力粉をふるいにかけたら、服とスリッパに粉が思い切りかかった。無塩バターを常温に戻すのはレンジにすこしかけてサボった。でも楽しかった。

オーブンレンジを時々観察しながら待つ、待つだけなのに緊張した。焼きあがったケーキは、表面が少し焦げてしまった。中は大丈夫そうだったので、表面だけ包丁でこそいで誤魔化した。できた頃、ちょうど豆餅くんが帰ってきたのですごいでしょと自慢した。

ふたりで味見をして「おいしいね」と概ね成功したことに安心しつつ、知り合いのパティシエさんがこういう焼き菓子は1晩置いた方が材料が馴染んで美味しくなるといっていたので、その通りに期待して切り分けて冷蔵庫に入れた。

次の日、1日置いたケーキを食べた。思ったよりぎっしりと密度の高い固めのケーキになった。パイナップルは缶詰だったけれど甘みがいい具合に溶けていてとても美味しかった。

何も出来なかった昨日が、少し楽しい1日だったことに気づき、少し嬉しくなった。f:id:houei333:20260424202138j:image