粉砂糖の日

どこにでもいるような女

エレベーターにて

先日三ノ宮へ行った。特に予定には無かったが、気晴らしにとなんとなく電車に乗った。

まだ少し気分は落ちていて、誰にも話しかけられたくなかったので、耳にヘッドホンで蓋をしてガン飛ばしながら歩く。

そういう日に限って、声をかけられる。

場所は狭いエレベーター。私とかっこよくビジネススーツを来た海外の方のふたりきりになってまった、何語か分からない鼻歌をご機嫌に口ずさんでいる男性だった。

日本語以外できない私は少し恐怖する。ましてや1人で知らない言語の鼻歌を歌ってる人なんて。異国の雑貨やカフェがとても好きなのに、知らない言語がくると恐怖するなんて矛盾している。もっとわたしは日本人以外に軽やかになるべきだ。こういう時、知らないことが多いと生きるのが大変だなと思う。怖くないことも怖いってなってしまうので。

階のボタン側についたわたしは「何階ですか?」と聞かざる得ない状況になった。すんなり日本語が通じたビジネススナイスガイは鼻歌をやめ、「4階です。元気ですか?今日は仕事?」と聞いてきたので、「元気です、仕事の休憩中です」と全部嘘の返答をしたら、「なんの仕事?」と返してきた。どうしよう、アルバイトしながら絵を描いてますなんて言ったら変に話が長引いてしまう、それは今きつい、と思ったのでとっさに発動した謎の茶目っ気で「秘密」って自分の口に人差し指を当てて言った。彼は少し苦笑いした。

4階に着き、彼は私に先に出るよう手でジェスチャーした。サイゼリア神戸国際会館前店、入る目的地まで結局一緒だった。最後に「良い一日を」くらい気の利いたことを言えればよかった。彼は私を怖がらせる為でもナンパでもなく、むしろ優しさで挨拶をしてくれただけだったはずだ。

苦い顔しながら食べたハンバーグのソースが口内炎にひどくしみた。